ライターという仕事のあれこれ ~ライタースクール講師の日記~

現役ジャーナリストであり、「月吠えライタースクール」を主催するコエヌマカズユキが、ライターという職業にまつわるあれこれを書いていきます。

ライタースクールは詐欺なのか?

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2019年10月に、とあるライターがこのようなツイートをした。

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もちろん僕は、意義もニーズもあると信じているからこそ、ライタースクールを主催している。ただ、同氏の意見には必ずしも反対ではない。

 

僕自身、大手ライタースクールに通っていたことがある。ほかのそこそこ有名なライタースクールに通っていた人の話も聞いたことがある。それらの内容を踏まえて、中立な視点で考察したい。


僕が通っていたスクールは、週2回、半年にわたって講義が行われ、毎回違う講師が特化したテーマについて教えてくれるというもの。出版業界を広く網羅する内容だったため、ときには「これ必要か?」と思う回もあったし、「単なる講師の自慢話じゃん」という回もあった。だが、全体的には満足している。なぜなら、僕は「十分に元を取った」という自負があるからだ。

 

ライタースクールが提供するのは無形商材であり、フライパンや靴などの有形商材とは大きく異なる。そのため講義の価値は、受け手によって大きく変わる。料金が一律10万円だとしても、人によっては30万円の価値に感じるかもしれないし、1万円にしか感じないかもしれない。スクールによって、方針やカリキュラムは大きく違うが、この点は普遍的である。

 

僕は講義に行った際、必ず一番前の席に座った。もちろん、後ろの席でも講師の話は聞こえるし、ホワイトボードも見える。けれど、お金を払って学びに行っているのに、あえて後ろの席に座る人たちへ「どうして?」という疑問があった。そういった姿勢へのアンチテーゼと、貪欲に学びたいという意思表示だった。

 

実際、前の席に座ると、よく講師から指された。僕と同じような考えの、いつも隣の席になる生徒とも仲良くなった。僕にとっては歓迎するべきことだった。

 

講義が終わった後も、疑問があれば講師に遠慮なく質問した。連絡先を教えてくれた講師には、メールで疑問をぶつけることもあった。何なら、事務局のスタッフにも質問をした。生徒同士の飲み会の幹事も務め、クラス中に顔を売った。そのおかげで、生徒として通っていた現役編集者やライターともつながれた。「骨までしゃぶりつくす」という表現があるが、僕はそのライター講座を髄液まで吸った。受講料の16万円など、安いものだった。

 

逆に受動的な姿勢で、ただ漫然と講義を受けていては、安いと感じなかっただろう。そう言う意味では、冒頭のライターのつぶやきに対し、「500円は安い!」というコメントが寄せられていたが、ワンコインだからと言って決して安いわけではないのである。

 

ライタースクールは、魔法ではない。通っただけで成長する、夢や目標に向かって近づく、ということはありえない。自ら学ぶ意思がないと、ほぼほぼ意味はないのだ。

 

明らかに詐欺的な内容のスクール、例えば実力が極端に乏しい講師陣や、ずさんかつ誠意のない運営、小手先のテクニックしか教えない講義など、スクールの質がどうしようもない場合は、いくら積極的に学ぶ姿勢を持っても、元は取れないかもしれない(ライター氏の言う「詐欺」とはこういったスクールを指すと思いたい)。

 

しかし、ある程度まともなスクールであれば(ここには月吠えライタースクールも含まれると自負している)、通う本人の意思によって、料金以上の価値を享受することは十分に可能なのである。そう、ライタースクールが役に立つかどうか、自分を成長させてくれるかどうかは、本人の意思や姿勢にほかならない。

 

「そんなにガツガツしたら、スクール側に嫌がられるのでは?」
そう思う方もいるかもしれない。

 

ここで講師の目線に戻る。月吠えライタースクールは、まだ立ち上げたばかりで、運営も最小限の人数で行っている。仕組みが整備された大手スクールと比べると、至らぬ点がまだまだあるかと思う。

 

一方で、すべてをマニュアル化することはしたくない、と思っている。最低限のルールは設けつつ、本気で講義を受けてくれて、何かを得ようとする方には可能な限りお応えしたい。

 

僕も駆け出しのころ、そうそうたるライターの方たちに会いに行き、時間をとってもらい、貴重なお話を聞かせてもらったものだ。あのとき、先輩たちが損得抜きに対応してくれた経験を、今度は必要としてくれる人たちにお返ししていきたい。

 

スクールという仕組み上、どうしても料金が発生し、最低限のルールはもうけさせていただくのだが、そのなかで可能な限り、皆様に向き合っていきたい。遠慮は不要で、質問や要望はいくらでもぶつけてほしい。むしろ、そういう方にぜひ受講いただきたいと考えている。

 

最後に追記。僕が通っていたライタースクールは、僕がとっていたようなガツガツする姿勢を「大歓迎」とおっしゃっていた。オペレーションだけを考えたら、この言葉は出てこないだろう。何とも懐の広いスクールであると、感嘆したものだった。